検査値の看護|疾患別の基準値や読み方
- 公開日: 2014/11/4
- 更新日: 2017/8/9
検査の種類は同じでも、疾患によって注目すべき検査データは異なります。
よくある疾患を挙げ、どこに注目すべきか解説した記事をまとめました。
さらに「基礎知識」「素朴なギモン」も掲載。検査値を勉強するなら、必見です!
*2017年8月9日改訂
知っておきたい基礎知識
疾患の検査値を見る前に、検査値に関する基礎知識を知っておきましょう。
パニック値とは基準値から明らかに逸脱していて、危機的な状態であることを示す値です。臨床でパニック値を見つけたらどう対応したらよいのでしょうか。
まずはパニック値とは何なのか、見つけたときにどうしたらよいのかを知っておきましょう。
パニック値とは何か??
検査結果を見るとき、まずどこから見ていますか? この記事では、検査結果の見方、異常値の見方について解説しています。
【看護師必見!】検査値の異常値の読み方
検査データのココを見る!
検査データは疾患によって見るべきものが違います。血液検査や画像検査をどう組み合わせて見る必要があるのかをこのシリーズでは解説しています。
- 【心不全とは?】心不全の検査データはココ(左室駆出率など)を見る!
- 虚血性心疾患の検査データはココを見る!(CK-MBの基準値など)
- 【呼吸不全とは?】呼吸不全の検査データはココを見る!
- 【肺炎とは?】肺炎の検査値(データ)はココを見る!
- 【透析療法とは?】透析患者さんの血液検査データはココを見る!
今さら聞けない素朴なギモン
臨床で検査値を見るときのちょっとした疑問を集めました。
炎症を見る検査値の代表といえば、白血球とCRPですが、単純に増加、上昇していれば炎症があり、減少、下がっていれば炎症が収まっているとはいえません。どのようなときに、気をつけなければならないのかを知っておきましょう。
腎機能を見る検査値の1つであるクレアチニン。この値が正常であれば、腎機能も正常であると言い切れるのでしょうか。この記事では、腎機能がどのような状態になるとクレアチニンの値に表れてくるのかを解説しています。
クレアチニン値が正常なら、腎機能も正常?
主な検査値の基準値と概要
基準値は、施設や検査機関によって違います。ここで紹介しているものは、あくまでも目安です。
●WBC(白血球数)
基準値 3300~9000/μℓ
基準値より高い場合 感染症、炎症、熱傷、手術、血液疾患
基準値より低い場合 再生不良性貧血、白血病、重症感染症、薬剤副作用
【感染性心内膜炎】検査値の看護への活かし方
【心内膜炎の患者さん】 事例で見る検査値の活かし方
●Hb(ヘモグロビン)
基準値 男)13.5~17.5g/dl 女)11.5~15.5g/dl
基準値より高い場合 真性多血症
基準値より低い場合 貧血、出血、血液悪性疾患
「貧血」は検査データがどのようなときの状態?
【貧血】検査値を組み合わせてアセスメント
【出血性ショック】検査値の看護への活かし方
●PT(プロトロンビン時間)
基準値(PT-INR) 0.85~1.15%
基準値より高い場合 肝硬変、劇症肝炎、ワーファリン投与時、ビタミンB欠乏症、大量出血、外因系や共通系の各凝固因子の先天性欠損症
●APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)
基準値 25.0~36.0秒
基準値より高い場合 内因系や共通系の各凝固因子の先天性欠損症、ビタミンK欠乏症、大量出血、肝硬変、劇症肝炎、フィブリノゲン欠損症
【DIC】検査値の看護への活かし方
●FDR/D-ダイマー
基準値 FDP:5.0μg/ml未満 D-ダイマー:0.72μg/ml以下
基準値より高い場合 線溶亢進、急性静脈血栓症、薬物投与
【術後に肺血栓塞栓症を発症した患者さん】事例で見る検査値の活かし方
【DIC】メカニズムと検査値編
●Alb(アルブミン)
基準値 3.8~5.2/dl
基準値より高い場合 脱水症
基準値より低い場合 急性・慢性炎症、低栄養状態、代謝亢進、自己免疫性疾患
【肝硬変】メカニズムと検査値編
●TP(血清総蛋白)
基準値 6.7~8.3g/dl
基準値より高い場合 多発性骨髄腫、脱水
基準値より低い場合 肝疾患、がん末期、ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症、低栄養
●BUN(血中尿素窒素)
基準値 8.0~20.0mg/dl
基準値より高い場合 糸球体濾過率の低下、尿管閉塞、消化管出血、心不全
基準値より低い場合 劇症肝炎、肝不全、低蛋白食、尿崩症
【薬剤性劇症肝炎】検査値の看護への活かし方
●Ccr(クレアチニンクリアランス)
基準値 60分法)82~183ml/min 120分法)82~183ml/min 24時間法) 95.2~308.3l/day
基準値より高い場合 妊娠中、発熱時、激しい運動後、継続的な高蛋白食
基準値より低い場合 糸球体濾過率の低下、血圧や腎血流量の低下、脱水、加齢
【腎不全】メカニズムと検査値編
腎機能をみるために必要な検査データって?
●K(血清カリウム)
基準値 3.5~5.0mEq/l
基準値より高い場合 腎不全、副腎不全、薬剤投与中、アシドーシス、細胞崩壊
基準値より低い場合 アルカローシス、下痢、嘔吐、アルドステロン症
●CK(クレアチンキナーゼ)
基準値 男)60~270U/l/37℃ 女)40~150U/l/37℃
基準値より高い場合 急性心筋梗塞、筋疾患、悪性腫瘍、外傷、けいれん発作、薬物中毒、甲状腺機能低下症
基準値より低い場合 甲状腺機能亢進症、長期臥床
●CK-MB(CKのアイソザイム)
基準値 5.2ng/ml以下
基準値より高い場合 急性心筋梗塞、心筋炎
【虚血性心疾患】 メカニズムと検査値編
虚血性心疾患(心筋梗塞と狭心症)を判断するための検査データは?
●CRP(C反応性蛋白)
基準値 0.30mg/dl以下
基準値より高い場合 種々の感染症、組織の障害、膠原病
【血球貪食症候群】検査値の看護への活かし方
●BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)
基準値 18.4pg/ml以下
基準値より高い場合 慢性心不全、本態性高血圧、慢性腎不全、急性心筋梗塞、心筋炎
【心不全】メカニズムと検査値編
●P(血清無機リン)
基準値 2.5~4.5mg/dl
基準値より高い場合 急性腎不全、細胞崩壊、慢性腎不全、副甲状腺機能低下症
基準値より低い場合 アルコール依存症、悪性腫瘍による高カルシウム血症、原発性副甲状腺機能亢進症
●Ca(血清カルシウム)
基準値 8.4~10.4mg/dl
基準値より高い場合 悪性腫瘍、サルコイドーシス、ビタミンD中毒
基準値より低い場合 ビタミンD不足、慢性腎不全、
●トロポニンT
基準値 0.05ng/ml以下
基準値より高い場合 心筋梗塞
【急性心筋梗塞】検査値の看護への活かし方
●フェリチン
基準値 男性)30~300ng/ml 女性)10~120ng/ml
基準値より高い場合 膠原病、炎症性疾患、白血病、悪性リンパ腫、再生不良性貧血
基準値より低い場合 鉄欠乏性貧血
【透析療法とは?】透析患者さんの血液検査データはココを見る!
●PCT定量 (プロカルシトニン)
基準値 0.05ng/ml以下
基準値より高い場合 細菌感染
●RBC(赤血球数)
基準値 男性)430~570×104/μl 女性)380~500×104/μl
基準値より高い場合 真性多血症、二次性赤血球増加症
基準値より低い場合 貧血、出血、血液悪性疾患
●Ht(ヘマトクリット)
基準値 男性)39.7~52.4% 女性)34.8~45.0%
基準値より高い場合 真性多血症、二次性赤血球増加症
基準値より低い場合 貧血、出血、血液悪性疾患
●FIB(フィブリノゲン)
基準値 155~415mg/dl
基準値より高い場合 感染症、悪性腫瘍、糖尿病、脳梗塞や心筋梗塞の後、膠原病、ネフローゼ症候群
基準値より低い場合 重症肝疾患、DIC、大量出血後、先天性フィブリノゲン欠乏症
●Amy(血清アミラーゼ)
基準値 40~122U/l/37℃
基準値より高い場合 膵疾患、悪性腫瘍、糖尿病性ケトアシドーシス、腎不全、マクロアミラーゼ、消化管穿孔
【急性膵炎】検査値の看護への活かし方
【膵疾患】メカニズムと検査値編
●Cr(血清クレアチニン)
基準値 男性)0.61~1.04mg/dl 女性)0.47~0.79mg/dl
基準値より高い場合 糸球体濾過率の低下、うっ血性心不全
基準値より低い場合 妊娠、筋肉量の減少、尿崩症
●Bil(血清ビリルビン)
基準値 総)0.2~1.2mg/dl 直接)0.0~0.2mg/dl
基準値より高い場合
直接ビリルビン優位)閉塞性横断、肝内胆汁うっ滞、薬物性肝障害
間接ビリルビン優位)溶血性貧血、新生児黄疸、体質性黄疸
肝機能をみるために必要な検査データって?
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慢性肝炎の経過観察に欠かせない検査値は?
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各種検査
CT検査
CTは、身体にX線を照射して、その吸収率の違いをコンピュータ解析によって画像化する検査法です。
●臓器などの断層面を映し出すことができる
●複数の検出器が備わり広範囲・短時間での撮影が可能になったマルチスライスCTというものがある
●適応は、腫瘍、炎症、血管性病変など
●検査時間が短く、重症患者や緊急の外傷患者にも適している
胸部画像診断(CXR、CT)の目的と看護のポイント
CT検査の応用範囲の拡大と問題点
造影CTを用いた病変の精査
CT検査とは?|看護師の役割と検査説明のポイント
MRI検査
強い静磁場の中に人体を置き、ラジオ波を照射すると放出されるエネルギーの信号をキャッチし、画像化する検査法です。
●造影剤を使用した造影MRIのほか、胆嚢・胆管・膵管を抽出するMRCP、血管を抽出するMRAがある
●検査は、部位別の専用コイルを装着し、寝台に横になった状態で狭い筒状のガントリー内に入って受ける
●縦・横・斜めといった任意の方向からの断面画像の撮影ができる
●診断だけでなく治療・手術の際の病変部位の位置、周辺臓器との関係なども把握できる
●骨の影響が少なく、頭など、骨に囲まれた情報が見やすい
●骨に囲まれた部分だけでなく、骨の中の変化も見ることができる
MRIの進歩~より早く、より細かく
MRIの特徴とMRIで得られる特殊な情報
MRI検査 基本的な事柄
MRI検査(MRCPやMRAなど)|看護師の役割と検査説明のポイント
単純X線撮影
単純X線撮影は、体の中にX線を通過させてその影を撮るという方法で行います。
●ポータブルX線装置を使用すれば、ベッドサイドで撮像することも可能
●呼吸の状態やフィルムとの位置関係、体位などによって得られる画像は大きく影響される
●一度の撮影で広い範囲をカバーできる一方、マンモグラフィのように範囲を限定して精細度の高い画像を得ることも可能
●体位や肢位を工夫することで、関節などの特定の情報を評価しやすくすることもできる
超音波検査
人の可聴域(20Hz~20kHz)を超える高い周波数の音波を体内に当て、戻ってくる反射波を画像化する検査法です。
●痛みや被曝がなく、小児や妊婦、高齢者にも広く用いることができる
●画像を鮮明化するなど、医師が必要と判断した場合には造影検査が行われる
●各臓器の形態、病変の有無、位置および形状・状態などの質的量的診断や、血流情報がわかる
●超音波が通過しない骨組織、肺など気体を含む組織、厚い脂肪層などには不向き
超音波検査(心エコーや腹部エコーなど)|看護師の役割と検査説明のポイント
尿検査
尿中の成分を知ることにより、腎・尿路系疾患だけではなく、全身性疾患の有無を発見することが出来ます。主な項目としては、白血球、ウロビリノーゲン、潜血、ビリルビン、ケトン体、ブドウ糖、たんぱく質、pH、尿比重などがあります。尿沈渣以外の検査は試験紙を用いて行われることが多いです。また、通常は、早朝尿かつ中間尿を採尿コップを使用して採取します。